兵庫県姫路市・神戸市に美容室3店舗、ギャラリー・フォトスタジオを構えるほか、ジュニアスタイリストのためのジュニアサロン2店舗を展開する TICK-TOCK。 かつてジュニアスタイリストの離職が多かったことから、“稼げる”ための仕組みづくりに着手。目を見張るような実績として表れた。さて、その仕組みとは?
サロンには技術カリキュラムがある。カリキュラムは大抵は能力給と連動して、1つのカリキュラムをクリアするごとに、能力給として給与に加点されていく。
しかし、この能力給の問題点は、業績に反映された給与システムとは言えないこと。あくまでも、その技術をできるまでにスキルアップしたいという証明だけであって、業績とは連動しないからだ。
この問題点をあぶり出し、あくまでもお客様に施術を提供した、その実績で給料を査定するという方向に大きく舵を切り替えたのが、美容室 TICK-TOCK(代表SAYURI氏)である。
「ジュニアスタイリストとしてデビューすると、途端に辞めていく人たちが多くなっていたんです。売上げを自分で思うようにつくれなくなるからですね。数年前、うちのトップスタイリストが“スタイリストデビュー時に60万円売上げられる仕組みをつくろう”と提案してくれたのがきっかけです」
最初は20万円を売上げなければデビューできないと決めていたのだが、1人が達成すると次から次へと達成者が出てきた。それがいつの間にやら30万円になり40万円になっていった。
その秘訣は、モチベーションに火をつけたから。つまり、前に実績をつくった数度を抜くというのが目標になり、その目標を達成することが上昇のスパイラルとなってアシスタント間で習慣化していった。
ここで断わっておくが、スタイリストを含めてチームとして役割分担をし、売上げをシェアし合うのではない。あくまでもスタイリスト自らがモニター側で、お客様を集客して自らが施術するのだ。
そこで月60万円を売上げたというアシスタントが誕生した。すでに40万円を売上げるアシスタントは珍しくなくなってきた。60万円を売上げるそのやり方とは、どのようなものなのか。理論より証拠、実績を上げたアシスタントに聞いてみることにした。
疋田智幸さんは語る。「以前からサロンのブログにお客様の写真をアップして、100人ほどになっていました。そこで1ヵ月間でお客様と自分のツーショット写真をアップしたいと自分で企画して、会社のみんなに宣言したのです」
結果は75人だったが、その75人のお客様の施術にあたったことで、60万円の売上げが達成できたのだ。「店長はじめ先輩の方々、オーナーも含めて応援や助けがあったからできたことです」と疋田さん。
なんと今度は、この5月にオープンするジュニアサロンで、堂々とスタイリストとしてデビューするという。
施術料金は通常スタイリストの70%しかお客様からいただけないが、それでもデビューした初月に、なんと今度は売上げ100万円達成させると宣言した。
それには180人からの集客を実現して、お客様のブログアップをしなければならない。しかしながらアシスタントとして60万円の実績があるから、その自信はゆるぎない。
100万円達成すれば、ジュニアサロンを卒業して、今度は通常サロンに戻っていけるのだという。
さらにもう一人、こちらは55万円を売上げた篠塚龍さんだ。
ブログならぬ Facebook をツールに使った。
「お客様に必ず写真とコメントをあげていただき、僕は『いいね!』をしてシェアをする。その写真にコメントをいただいたお客様の『お友達』にもお誘いのコメントを必ずしました」
疋田さんも篠塚さんも新しいツールを駆使して、集客に努めている。「来客していただいたときには、リアルな世界でお客様にお礼をしました。
すると、その話でまた盛り上がって、どんどん紹介をお願いしました。Facebook はあくまで手段であって、やはりリアルなサロンという現場で、リアルなに人々と繋がることが大切だと思います」
まったくその通りだろう。物の売り買いではない、最初から最後まで「人」が介在する美容師という仕事なのだから。
TICK-TOCKでは、2013年5月にジュニアサロン、すでに2月にオープンしているもう1つのジュニアサロンがある。
2店舗で5人の体制となるが、いずれも100万円の個人売上げを達成したら、既存のサロンに戻って正規にスタイリストとしてデビューすることになっているのだ。
BBcom 2013年5月号